冒険は終わったmk2

好きなゲームや映画やアニメのことを書いてます。ネタバレあります。

イノセンス

innocence

the fact of not being guilty of a crime, etc

~オックスフォード現代英英辞典より

この作品を読み解くキーワードがいくつかあります。

イノセンス

フォローミー

幸せ

女の子

女の子というのは人、人形、義体の3種類が出てきます。

攻殻機動隊の世界観というのがかなり辛い設定で、人は既に人でない

作り物の身体に中央と繋がった脳が入っていて記憶はその脳に頼るだけです。

それは常にどこかからハックされて記憶を流し込まれる心配があるのです。

地球の近未来、アジアのどこかの狭い地域にひしめき合って暮らしていて、

他の地域は汚染されて住めない状態でしょうか?

その町の情景が美しすぎて引き込まれてしまうんですよね。

バトーとトグサの会話がほぼ引用で成り立っているのは、常に検索して

言葉を探しているからなのです。ネットへの痛烈な嫌味にも取れますね。

自分の言葉でしゃべってはいないのです。

でも何度も見ているうちに心に響く言葉がたくさんあることに気づきました。

もっと全体を覚えるまで見続けます。だって制作に4年かけてるんてすよ。

数回見ただけで分かる訳ないじゃないですか。

しかし凄腕プロデューサーの鈴木敏夫さまは一回見ただけで見抜いたそうです。

エンディングにアランフェス協奏曲に歌詞をつけた「Follow me」を置き、

「INNOCENCE」と題名を変えてしまいます。攻殻機動隊2だったのに。

どうしてこうなった?と最初に見たときから謎解きが始まりました。

私はこういうものに食いついたら解るまでノイローゼになるタイプです。

ふぉろみーふぉろみーと唱えているうちに「フォローミー!」と閃きます。

ミアファローのあの名作です。大好きな映画のひとつです。

おそらく押井監督も鈴木さんもあの映画が好きなんだと思います。

テーマは「いつでもそばにいるよ」です。愛ですよ愛。

もちろんキャロルリード監督への敬意も。

このあと、激しくネタバレするので隠します。。。。

前作の ghost in the shell のラストでバトーは最愛のパートナーである

草薙素子に別れを告げられてしまいます。

職場でも失踪扱いのまま、トグサが新しいパートナーになるのですが

バトーの手荒いやり方に、トグサはパートナーを辞退します。

自暴自棄なバトーは一人で敵の本尊に殴り込むんですが、

ガイノイドの一体に入り込んだ素子と再会します。

この辺は見てもらうしかない描写で、分かり合ってるふたりだなあと

少しだけ嬉しくなったりするのです。

この辺から監督と鈴木さんの間に暗黙の押し問答が交わされているであろう、

バトーがトグサにちゃんと家庭があることを確認すると、

ワンコと一緒に家に帰るわけですが沈黙からのエンディングテーマ。

これがなんとも絶妙で、映画館で観たかったなーと思いました。

ここまで書くのに十回近くは見ていて、初見では「?」ばかりでしたよ。

少しひねくれた監督の「僕は大丈夫なんだろうか」という問いに答えたのが鈴木さんの

イノセンス 無罪ーー大丈夫なんじゃない?」だと思います。

監督には幼い頃に離れざるを得なかった娘さんがいて、常に罪悪感をもってたんですね。

時々プレゼントを上げるくらいしか許されていなかったらしいのです。

この辺のくだりは「他力本願」に書かれているんですが、娘さんに対する

贖罪のような、たった一人に伝えたいがために作られたと思います。

分かるんですよ。どーせ他人には解らないんだから思い切り私情を入れて、

批評家たちがどれだけ見当違いな意見を述べるか見てやろうと。

鈴木さんは監督の私生活をよく知っているからこそ出来た仕事ですね。

私も世間がおかしな方向に騒いでるのを見て試験的に文章を出してみたら、

仕事仲間以外で正しく認識した人は居なかったです。

それくらい他人を理解するのは難しいし、知ったかぶりは恥ずかしいよってことです。

「シーザーを理解するのにシーザーになる必要はない。」

「万人が歴史的英雄になれるわけもない。」

ヤクザの事務所にお話に行く時にバトーがトグサに言う言葉です。

断片的に心に残るセリフがたくさんあるのでよーく見てくださいね。

現段階で鈴木さんの目論見は見事に成功し、世間を騙し通したことになります。

この謎解きを通して、ますます鈴木敏夫の恐ろしさを知りましたよ。

この人に嘘をついてはいけません。直ぐに見破られます。